Column · 運用ガイド

ストレスチェックの集団分析とは?やり方・見方・職場改善への活かし方

公開日: 2026年9月3日 監修: 村上 郁也(産業保健師) 読了目安: 約8分

ストレスチェックを実施して、高ストレス者に面接指導を案内して、報告書を出して終わり——。それでは制度の半分しか使えていません。ストレスチェックの本来の目的は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと。その中心にあるのが集団分析と職場環境改善です。この記事では、集団分析のやり方、10人未満の集団をどう扱うか、「仕事のストレス判定図」の読み方、そして結果を職場の改善につなげる手順を整理します。

集団分析とは——個人ではなく「職場」を見る

ストレスチェックの結果は、本人の同意がない限り会社には渡りません。では会社は何を見ればよいのか。その答えが集団分析です。部・課・拠点といった集団ごとに結果を集計し、その職場のストレスの状況を把握します。個人の結果とは違い、集団分析の結果は個人が特定されない形であれば、本人の同意なく事業者が受け取れます。

労働安全衛生規則第52条の14は、事業者に対し、実施者に集団ごとの集計・分析を行わせ、その結果を勘案して職場環境の改善に取り組むよう努めなければならないと定めています。つまり現行では努力義務です。義務ではありませんが、ストレスチェックの目的は「一次予防(メンタルヘルス不調の未然防止)」であり、その主役は個人の結果通知ではなく、この集団分析と職場改善です。やらないと、ストレスチェックは「年に一度のアンケート」で終わってしまいます。

やり方は3ステップ

1. 集団の単位を決める

部・課・チーム・拠点など、職場環境の改善を実際に行える単位で分けます。細かすぎると10人未満の集団が増えて分析できず、大きすぎると「どこを改善すればいいか」が見えません。組織図に沿って決め、実施前に衛生委員会で確認しておきます。毎年同じ単位にすると、経年比較ができます。

2. 実施者が集計・分析する

集計・分析を行うのは実施者(医師・保健師等、または外部委託先)です。人事担当者が個人の回答データを見て集計することはできません。クラウド型のサービスでは、集団の単位を登録しておけば自動で集計されます。分析の方法として、厚生労働省は仕事のストレス判定図を標準的な手法として示しています(後述)。

3. 事業者へ提供し、衛生委員会で共有する

集団分析の結果は、個人が特定されない形で事業者に提供されます。受け取った事業者は、衛生委員会(または安全衛生委員会)で報告し、職場環境改善の計画につなげます。結果を管理職に伝えるときは、責めるのではなく「一緒に改善を考えるための材料」として扱うことが重要です。

10人未満の集団は、原則そのまま出せない

集団分析でもっとも注意が必要なのが、集団の人数が10人未満の場合です。人数が少ないと、集団の結果から個人の回答が推測できてしまいます。このため実施マニュアルでは、10人未満の集団については、全員の同意がない限り、原則として事業者に結果を提供してはならないとしています。

状況取り扱い
集団が10人以上個人が特定されない形で、本人の同意なく事業者に提供できる
集団が10人未満原則として提供しない。全員の同意があれば提供できる
10人未満でも分析したい隣接する部署と合算する、ひとつ上の階層(部・拠点)で集計する、複数年分を合算する、などで10人以上にする
POINT

合算すればするほど「どこを直せばいいか」は見えにくくなります。10人未満の小さな課は、上の部で集計し、改善の話し合いは課ごとに行うという組み合わせが現実的です。従業員50人未満の会社では、事業場全体をひとつの集団として、前年との比較を中心に見るのがよいでしょう。

仕事のストレス判定図の見方

厚生労働省が示す標準的な分析手法が「仕事のストレス判定図」です。職業性ストレス簡易調査票(57項目)のうち、次の4つの尺度を使います。

この4尺度を2枚の図に落とします。

縦軸 × 横軸読み方
量-コントロール判定図仕事の量的負担 × 仕事のコントロール負担が大きく、かつ裁量が小さい職場ほど、右下(高リスク側)に位置する
職場の支援判定図上司の支援 × 同僚の支援上司・同僚の支援がともに低い職場ほど、高リスク側に位置する

2枚の図から算出されるのが総合健康リスクです。全国平均を100として、たとえば120であれば「全国平均より健康リスクが20%高い」と読みます。判定図には全国平均の点も表示されるため、自社の集団がどのあたりに位置するかが一目で分かります。

見方のコツ

職場環境改善への活かし方

集団分析は、改善につなげて初めて意味を持ちます。厚生労働省が推奨するのは、職場のメンバー自身が改善策を考える参加型の職場環境改善です。流れは次のとおりです。

  1. 結果を衛生委員会で共有する——高リスクの集団だけでなく、良好な集団の特徴も共有する
  2. 職場ごとに話し合う——管理職と従業員で、結果の背景にある具体的な事情(業務の偏り、会議の多さ、相談しにくい雰囲気など)を出し合う
  3. 小さな改善策を決める——業務分担の見直し、朝会の短縮、相談の窓口づくりなど、すぐ着手できるものから
  4. 実施して記録する——いつ・何を・誰がやったかを残す
  5. 翌年の集団分析で確認する——改善した集団の数値が動いたかを見る

集団分析の結果と職場改善の記録は、事業者が5年間保存することが望ましいとされています。翌年以降の比較のためにも、必ず残しておいてください。

やってはいけないこと

2028年4月の義務化と、50人未満の集団分析

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月から従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。集団分析については、現時点で公表されている範囲では努力義務という位置づけに変わりはないとみられますが、詳細は今後の省令・指針で示される見込みです。厚生労働省の公表内容をご確認ください。

小規模な事業場では、部署ごとに分けると10人未満の集団ばかりになります。事業場全体をひとつの集団として総合健康リスクを見て、前年との比較で改善の効果を確認する、というシンプルな使い方で十分です。義務化の前に一度実施しておくと、義務化後の初回で「前年との比較」ができる状態から始められます。

POINT

Good Day Check は、集団の単位を登録しておくだけで集団分析(10人以上の集団)を自動で集計し、部署別・前年比で表示します。事業場50人以下なら2028年3月末まで無料です。無料キャンペーンの詳細 →

よくある質問

集団分析は義務ですか?
現行では努力義務です(労働安全衛生規則第52条の14)。実施しなくても法令違反にはなりませんが、ストレスチェック制度の目的である一次予防(メンタルヘルス不調の未然防止)の中心は集団分析と職場環境改善です。報告書(様式6号の2)には集団分析の実施の有無を記入する欄があります。
10人未満の部署はどうすればよいですか?
10人未満の集団は、個人が特定されるおそれがあるため、全員の同意がない限り原則として事業者に結果を提供できません。隣接する部署との合算、ひとつ上の階層(部・拠点)での集計、複数年分の合算などで10人以上にして分析するのが一般的です。
集団分析の結果は誰が見られますか?
個人が特定されない形であれば、本人の同意なく事業者(人事・経営層)が受け取れます。衛生委員会で共有し、管理職にも改善のための材料として伝えるのが一般的です。ただし個人の結果を推測する目的での利用や、人事評価への利用は避けるべきです。
集団分析に本人の同意は必要ですか?
10人以上の集団で、個人が特定されない形であれば同意は不要です。10人未満の集団の結果を事業者に提供する場合は、その集団の全員の同意が必要です。
集団分析の結果はどのくらい保存しますか?
法令上の保存義務はありませんが、実施マニュアルでは事業者が5年間保存することが望ましいとされています。翌年以降の経年比較のためにも、結果と職場改善の記録をあわせて残してください。
総合健康リスクが100を超えていたら問題ですか?
総合健康リスクは全国平均を100とした相対的な指標で、120なら全国平均より健康リスクが20%高いと読みます。ただし業種によって平均的な水準は異なるため、全国平均との比較だけで判断せず、社内の部署間や前年との比較、4尺度(量的負担・コントロール・上司の支援・同僚の支援)のどれが高いかをあわせて見ることが大切です。

集団分析まで、これひとつで。

Good Day Check は、Web受検・結果通知・面接指導の管理に加えて、集団分析(部署別・前年比)と様式6号の2の数値集計まで自動で行います。
事業場50人以下なら2028年3月末まで無料(紙の受検も含む)です。

無料キャンペーンの詳細を見る →
SUPERVISED BY
村上 郁也 産業保健師・健康経営エキスパートアドバイザー

横浜産業保健師事務所VITAL BASE。大学病院看護師・行政保健師を経て、東証プライム上場企業の産業保健師として健康経営・産業保健マネジメントを主導。現在は中小企業の産業保健体制づくりとストレスチェック実施の現場を支援しています。事務所サイト ↗

出典・参考資料

本記事は、次の法令および厚生労働省の公表資料をもとに構成しています。

本記事は公開日時点の情報にもとづく一般的な解説であり、個別の事案についての判断を保証するものではありません。集団分析の取り扱いは実施マニュアル等に示された標準的な考え方にもとづいており、事業場の実情に応じた運用が認められる場合があります。最新の法令・指針は厚生労働省の公表内容をご確認いただき、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署または実施者にご確認ください。

← コラム一覧へ戻る