ストレスチェックの集団分析とは?やり方・見方・職場改善への活かし方
ストレスチェックを実施して、高ストレス者に面接指導を案内して、報告書を出して終わり——。それでは制度の半分しか使えていません。ストレスチェックの本来の目的は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと。その中心にあるのが集団分析と職場環境改善です。この記事では、集団分析のやり方、10人未満の集団をどう扱うか、「仕事のストレス判定図」の読み方、そして結果を職場の改善につなげる手順を整理します。
集団分析とは——個人ではなく「職場」を見る
ストレスチェックの結果は、本人の同意がない限り会社には渡りません。では会社は何を見ればよいのか。その答えが集団分析です。部・課・拠点といった集団ごとに結果を集計し、その職場のストレスの状況を把握します。個人の結果とは違い、集団分析の結果は個人が特定されない形であれば、本人の同意なく事業者が受け取れます。
労働安全衛生規則第52条の14は、事業者に対し、実施者に集団ごとの集計・分析を行わせ、その結果を勘案して職場環境の改善に取り組むよう努めなければならないと定めています。つまり現行では努力義務です。義務ではありませんが、ストレスチェックの目的は「一次予防(メンタルヘルス不調の未然防止)」であり、その主役は個人の結果通知ではなく、この集団分析と職場改善です。やらないと、ストレスチェックは「年に一度のアンケート」で終わってしまいます。
やり方は3ステップ
1. 集団の単位を決める
部・課・チーム・拠点など、職場環境の改善を実際に行える単位で分けます。細かすぎると10人未満の集団が増えて分析できず、大きすぎると「どこを改善すればいいか」が見えません。組織図に沿って決め、実施前に衛生委員会で確認しておきます。毎年同じ単位にすると、経年比較ができます。
2. 実施者が集計・分析する
集計・分析を行うのは実施者(医師・保健師等、または外部委託先)です。人事担当者が個人の回答データを見て集計することはできません。クラウド型のサービスでは、集団の単位を登録しておけば自動で集計されます。分析の方法として、厚生労働省は仕事のストレス判定図を標準的な手法として示しています(後述)。
3. 事業者へ提供し、衛生委員会で共有する
集団分析の結果は、個人が特定されない形で事業者に提供されます。受け取った事業者は、衛生委員会(または安全衛生委員会)で報告し、職場環境改善の計画につなげます。結果を管理職に伝えるときは、責めるのではなく「一緒に改善を考えるための材料」として扱うことが重要です。
10人未満の集団は、原則そのまま出せない
集団分析でもっとも注意が必要なのが、集団の人数が10人未満の場合です。人数が少ないと、集団の結果から個人の回答が推測できてしまいます。このため実施マニュアルでは、10人未満の集団については、全員の同意がない限り、原則として事業者に結果を提供してはならないとしています。
| 状況 | 取り扱い |
|---|---|
| 集団が10人以上 | 個人が特定されない形で、本人の同意なく事業者に提供できる |
| 集団が10人未満 | 原則として提供しない。全員の同意があれば提供できる |
| 10人未満でも分析したい | 隣接する部署と合算する、ひとつ上の階層(部・拠点)で集計する、複数年分を合算する、などで10人以上にする |
合算すればするほど「どこを直せばいいか」は見えにくくなります。10人未満の小さな課は、上の部で集計し、改善の話し合いは課ごとに行うという組み合わせが現実的です。従業員50人未満の会社では、事業場全体をひとつの集団として、前年との比較を中心に見るのがよいでしょう。
仕事のストレス判定図の見方
厚生労働省が示す標準的な分析手法が「仕事のストレス判定図」です。職業性ストレス簡易調査票(57項目)のうち、次の4つの尺度を使います。
- 仕事の量的負担——仕事の量が多い、時間内に処理しきれない、など
- 仕事のコントロール——自分のペースで仕事ができる、やり方を自分で決められる、など
- 上司の支援——上司に相談しやすい、頼りになる、など
- 同僚の支援——同僚に相談しやすい、頼りになる、など
この4尺度を2枚の図に落とします。
| 図 | 縦軸 × 横軸 | 読み方 |
|---|---|---|
| 量-コントロール判定図 | 仕事の量的負担 × 仕事のコントロール | 負担が大きく、かつ裁量が小さい職場ほど、右下(高リスク側)に位置する |
| 職場の支援判定図 | 上司の支援 × 同僚の支援 | 上司・同僚の支援がともに低い職場ほど、高リスク側に位置する |
2枚の図から算出されるのが総合健康リスクです。全国平均を100として、たとえば120であれば「全国平均より健康リスクが20%高い」と読みます。判定図には全国平均の点も表示されるため、自社の集団がどのあたりに位置するかが一目で分かります。
見方のコツ
- 全国平均との比較より、社内の部署間・前年との比較を重視する。業種によって平均的なストレスの水準は異なります
- 総合健康リスクの数字だけで判断しない。4尺度のどれが原因かを見て、初めて改善策が決まります(量が多いのか、裁量がないのか、支援がないのか)
- 高ストレス者の割合や受検率もあわせて見る。受検率が低い部署は、結果そのものが職場の状態を反映していない可能性があります
- 1回の結果で決めつけない。異動直後や繁忙期の実施は一時的な影響が出ます。経年で見る前提で、毎年同じ時期に実施します
職場環境改善への活かし方
集団分析は、改善につなげて初めて意味を持ちます。厚生労働省が推奨するのは、職場のメンバー自身が改善策を考える参加型の職場環境改善です。流れは次のとおりです。
- 結果を衛生委員会で共有する——高リスクの集団だけでなく、良好な集団の特徴も共有する
- 職場ごとに話し合う——管理職と従業員で、結果の背景にある具体的な事情(業務の偏り、会議の多さ、相談しにくい雰囲気など)を出し合う
- 小さな改善策を決める——業務分担の見直し、朝会の短縮、相談の窓口づくりなど、すぐ着手できるものから
- 実施して記録する——いつ・何を・誰がやったかを残す
- 翌年の集団分析で確認する——改善した集団の数値が動いたかを見る
集団分析の結果と職場改善の記録は、事業者が5年間保存することが望ましいとされています。翌年以降の比較のためにも、必ず残しておいてください。
やってはいけないこと
- 集団分析の結果から個人を推測する——「この課で高ストレスなのはあの人だろう」といった推測は、制度の信頼を損ないます
- 人事評価や配置転換の根拠に使う——集団分析は職場環境の改善のためのものです。管理職の評価に直結させると、翌年から正直な回答が得られなくなります
- 10人未満の集団を同意なく出す——個人特定のおそれがあり、原則として提供できません
- 結果を放置する——受検したのに何も変わらなければ、従業員は「答える意味がない」と感じ、受検率が下がります。小さくても改善を返すことが大切です
2028年4月の義務化と、50人未満の集団分析
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月から従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。集団分析については、現時点で公表されている範囲では努力義務という位置づけに変わりはないとみられますが、詳細は今後の省令・指針で示される見込みです。厚生労働省の公表内容をご確認ください。
小規模な事業場では、部署ごとに分けると10人未満の集団ばかりになります。事業場全体をひとつの集団として総合健康リスクを見て、前年との比較で改善の効果を確認する、というシンプルな使い方で十分です。義務化の前に一度実施しておくと、義務化後の初回で「前年との比較」ができる状態から始められます。
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よくある質問
集団分析は義務ですか?
10人未満の部署はどうすればよいですか?
集団分析の結果は誰が見られますか?
集団分析に本人の同意は必要ですか?
集団分析の結果はどのくらい保存しますか?
総合健康リスクが100を超えていたら問題ですか?
集団分析まで、これひとつで。
Good Day Check は、Web受検・結果通知・面接指導の管理に加えて、集団分析(部署別・前年比)と様式6号の2の数値集計まで自動で行います。
事業場50人以下なら2028年3月末まで無料(紙の受検も含む)です。
あわせて読みたい: 高ストレス者から申出がないときの対応 / いつ実施する?実施時期と年間スケジュール / 様式6号の2の記入例と書き方 / 2028年の義務化拡大で何が変わる?
出典・参考資料
本記事は、次の法令および厚生労働省の公表資料をもとに構成しています。
- e-Gov法令検索|労働安全衛生規則(第52条の14 検査結果の集計・分析の努力義務) ↗
- 厚生労働省|労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 実施マニュアル ↗
集団分析の方法、10人未満の集団の取り扱い、仕事のストレス判定図、結果の保存(5年間が望ましい) - 厚生労働省|ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等 ↗
指針・マニュアル・職場環境改善に関する資料へのリンク - 厚生労働省(こころの耳)|ストレスチェック制度関係Q&A ↗
集団分析の単位、10人未満の扱い、事業者への提供 - 厚生労働省(こころの耳)|働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト ↗
職場環境改善の進め方、事例 - 厚生労働省|心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2) ↗
集団ごとの分析の実施の有無の記入欄
本記事は公開日時点の情報にもとづく一般的な解説であり、個別の事案についての判断を保証するものではありません。集団分析の取り扱いは実施マニュアル等に示された標準的な考え方にもとづいており、事業場の実情に応じた運用が認められる場合があります。最新の法令・指針は厚生労働省の公表内容をご確認いただき、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署または実施者にご確認ください。